「椎菜さ――、それってわざと?」
「え?」
まるで遊ぶように、あたしの髪をその指に絡めとる響。
あたしの全身の神経が、一気に集まっていく。
わ、わざとって……。
思い出す。
あの七夕の夜のこと。
額に落ちた、柔らかな髪のことを。
ドクン!
「……」
カアアア
頬だけじゃない。
もう、全身がまるで心臓になったみたいに激しく鼓動を打つ。
後頭部痛い?
胸の奥が痛い。
まだ授業中。
だれもいない保健室。
カーテンの閉まったベッドに2人きり。
外から微かに聞こえる生徒達の声が、あたし達だけまるで別世界にいるような、そんな感覚にグラリと目眩がした。
……火が出そう。
タンコブあるとこも、ジンジン痛い。
ああ、こんなんじゃ……響に気持ちバレちゃいそう。
ダメなのに。
バレちゃだめなのに。
響は?
あたしの反応みて、楽しんでる?
それとも、迷惑だって顔しかめてる?
どうして、こんな事するの?
あたしは……
響でいっぱいいっぱいだよ。
「……」
耐え切れなくて、チラリと響を見上げた。
…………え?



