意識が遠のきそうな、そんな目眩にも似た感覚に襲われた瞬間だった。
『ブーブーブー』
その時突然胸を震わす携帯のバイブに、ビクリと体が震えた。
「わっ!」
きゃああ!
なんでよりにもよって今なのよお!
び、びっくりした……。
一気に現実に引き戻されて、それと同時に目を閉じそうになってた自分が恥ずかしくて。
あたしは、慌てて響の傍を離れた。
巾着から出した携帯電話が、真っ黒なテーブルの上で震えていた。
カラフルに点滅するランプを見て、それがお母さんからだとわかった。
「……も、もしもし……」
なんとなく罪悪感を感じてしまって、しどろもどろになりながら受話器を耳に押し当てた。
男の人の家で……あたし何してんだ。
『あ、椎菜? 雨降ったけど大丈夫? カケルに迎え行かせようか』
「え? だ、大丈夫だよっ。も、もう帰るとこだったし。雨宿りもしてたから、平気平気~……」
って、そう言って全然平気なんかじゃない。
もう心臓バックバク。
さっきのは、本当になんだったのか。
響、まさか……。
あたしに……キ、キスしようとした……とか?
ああだこうだと話をしている母親の言葉なんか全く耳に入ってこない。
「……」
チラリと響に視線を移す。
バレないように、こっそりと。



