だけど、甘いだけじゃなくて……爽やかな、味。
そう……それはまるで……。
「響の味」
「ん?」
ソファの肘掛に乗せていた腕が、カクンってずり落ちそうになりながら響はあたしを見つめた。
でも、そんなのあたしには関係なくて。
響の入れてくれたこの紅茶に、媚薬でも入ってたみたいにあたしの心臓はどんどん加速していく。
「……甘くて。 だけどちょっとだけスパイスが利いてるみたいに口に入れた瞬間ふわって爽やかな春の風の匂いがする。不思議な感じ。
……響に初めて会った時も、春だったでしょ?」
「……そ、それはどうも」
……。
ハッ!
ぎゃ!
あたし、何言っちゃってんのっ!
少しだけ長い前髪の隙間から、切れ長の瞳を見開いて。
驚いたように瞬きを繰り返してる響。
その顔を見て、自分が言ったことが急に恥ずかしくなってしまった。
興奮して、身を乗り出していたあたしと響との距離がすごく近い。
複雑そうに顔をゆがめてる響がどう思ったのか。
言われなくてもわかったような気がして。
あたし……失敗した……。
「……あ、あの……えと……」
耳まで熱くなるのを感じて、あたしはぎこちなく体を元の位置に戻した。
「……」
何も言わない響。
わーん。
穴があったら入りたいーっ。
意味もなく、手元の紅茶をジッと見つめる。
身動きも取れなくて。
息をするのも忘れちゃいそうな程、あたしの心臓がドクドクって加速を続けた。
勢い良く押し出される血液に目眩を感じながら、キュッと目を瞑った。
その時……なにやら左隣から何かを堪える声が。
「……ッ」



