ダンデライオン~春、キミに恋をする~


「雨、止まないね……」




カーテンの隙間から、窓の外を覗く。

慌ててお風呂に入ったあたしは、ジッとしていられなくて。

さっきよりは小ぶりになったみたいだけど、まだ歩いて帰るには躊躇してしまいそうな振り方だった。


時計に目をやると、すでに針は9時を回っていた。






バスの時間……大丈夫かな?
ふかふかのソファに腰を沈めて、湿ったままの巾着を引き寄せると中から携帯を取り出した。


迎え……頼んじゃおうかな。


携帯をいじっていると、手元に影が落ちた。
顔を上げると、響が大きなグラスを両手に持ってそれを持ち上げて見せた。


「アイスティーだけど、飲む?」

「あ、うん。 ありがとう」


真っ白なカップを受け取った。
響は口元を緩めると、そのままあたしの横に座った。

やわらかいソファが、響の重みで少しだけ沈んだ。


「わ。 この紅茶おいしいっ。レモン……じゃないよね?」

「うん。確か……キャンディって種類の茶葉だったかな」

「キャンディ?」



ソファの背もたれに体を預けた響は、首を傾げたあたしを見て楽しそうに「カラン」とグラスの氷を鳴らして見せた。


「スリランカのキャンディ地方で採れるらしいんだけど、親父が贈ってくれたものだから、詳しくは俺も知らないんだ。 でも、アイスでもホットでもうまいからよく飲んでる」

「へえ、そうなんだ。 なんか、スーッとしてておいしい」


「うん」




口の中で、香りがフワーッと広がる感じ。

ほんと、キャンディみたいに甘くてビックリ。