ダンデライオン~春、キミに恋をする~



「最近、成田くんよく笑うよね」


のんちゃんがそう言ってあたしに視線を移した。


「シィちゃんのおかげかな?」

「……あは。 まさか」



でも……。
そう、かな?
そうだと、いいな……。


転校当初は、何考えてるかわかんないって言われてた響だけど。
最近では、クラスの男の子達と気兼ねなく話してるのをよく見かける。

別に響は話さないわけじゃないもんね。

だからパッと見クールな響が、無邪気に笑ってるものだから……。



「そういえば、よく女の子に呼び出されてるよね?ま、あのルックスだもん。 そのへんはしょーがないのかもしれないけど。 シィ、気をつけなよー」


ゆっこが「うーん」と腕組みをしながらあたしを見た。



「ハハ」



って、笑えないんだってば、あたし。

そうなんです。
密かに女子に人気が出て来ちゃってるんです。


『誰でもよかった』


そう言った響の言葉が、時々頭の中をよぎる。


不安になっちゃうな。


だって。
あたしは、ホンモノじゃないから。



「椎菜」



あたしに気づいた響が、輪の中を抜け出して真っ直ぐこちらに向かってくる。

穏やかな笑みを浮かべて片手を上げた響に、性懲りもなく、心を奪われるんだ。