悪魔があたしに囁いて。
とうとう誘惑に負けそうになったその時。
「……椎菜」
「……」
ハッと我に返ると、振り返る響と目が合う。
……へ?
「……わああっ! ちち、違うっ! これは違くてっ……」
ばば、バレたあああ!
やーーーっ!恥ずかしすぎるっ。
思い切り身を引いて、両手を前に突き出したあたしは大袈裟なくらい首を横に振った。
響ときたら、一瞬目を見開いて、そのままパッと前に向きなおしてしまった。
「……」
うそぉ……。
引いたんだ。 そりゃそうだよね。
だって、触ろうとしてたんだもん。 あたし……。
変態……と思われたかも。
ガクーンとうな垂れたあたしの視界に影が落ちた。
「ん?」
首を傾げて顔を上げる。



