玄関の前に立ち、呼び鈴を鳴らした。

そうするのが人間の「マナー」というものらしい。

鍵を開ける音がし、右側の扉が奥の方へと動く。

その隙間から、セリーヌがひょっこりと顔を出してきた。


「ああ、やっぱりディーヴァ!私が出てよかったわ!それにしても早すぎっ」


可愛らしく頬を膨らませ、綺麗な青色の瞳でこちらを睨みながら言った。

まるで、私がきたのが迷惑みたいな言い方をするな、と思い、わずかに眉をよせる。

お前が来いって言ったからだろ、とは言わなかった。


「セリーヌが来いって言ったから来たの」


‥‥言わなかった。

だが、予想と反して彼女は私との再会を喜んでいるようだった。

なぜなら、彼女が私にいきなり抱きついてきたからだ。


「うれしいわ!」


私がわずかによろけると、私の体を彼女は右手でつかみ、引き寄せた。

私たちも嬉しいことがあれば、そういう感情表現をする。

だから、彼女が抱きついてきたことには、私に好意があるのだろうか?少なくとも敵意はなさそうだ‥と冷静に分析をしていた。

セリーヌはすぐに私から離れ、手を差し出してきた。


「さあ、どうぞ家に入ってくださいな!」