小さな人魚姫が見たのは、うすい青に染まった空と輝きはじめた星です。



静かな海には、大きな船が1つ浮かんでいました。



人魚姫は船に近づいて、乗っている人々を見ました。



そして、響いてくる音楽を聴いていました。



船の上では、王子様の誕生祝いが開かれていたのです。



人々にかこまれた王子様楽しそうに笑っていました。



「なんてきれいな人かしら」



人魚姫は若い、美しい王子様に見惚れました。




真夜中になると、船の明かりは消え、人々も王子様も見えなくなりました。



けれど人魚姫は王子様のことが忘れられず、船から離れることができません。



いつのまにか嵐が近づいていました。



海の底はごうごうとうなって、そらはさっきとはうって変わって黒い雲でいっぱいです。



船は波の動きに合わせて、ぐんぐんとはしり始めました。



もう一度、王子様が見たい。



そう思った人魚姫は船と一緒に泳ぎます。



物凄い風が吹き、雨もざあざあと降ってきました。



「大変だ、船が沈むぞ!」



人々が叫びました。