そうか…
やっと、分かった…


あの時の電話は
優斗が買った商品が
暴落したという知らせの電話だったんだ…


だから、あんなに落ち込んでたんだ…


何も知らず、呑気に誕生日の夜は何が食べたいなんて
言ってた自分が情けない。


「私と会った時
優斗さんは、抜け殻の様でした。
もう、何もかも終わりだと…

美羅さんに会わす顔がない
家にも帰れないって…」

「優斗が、そんなことを?」

「はい…
でも彼、とにかく損失分を埋めなくちゃって
駆けずり回って
800万もの大金用意したんですよ」

「えっ?どうやって?」

「それは…
私も最近まで知らなかったんですが…」


そう言うと
由香さんがプルプルと震えだす。


「由香さん?」

「…正規の金融会社じゃなくて…」

「まさか…」

「闇金融から…
凄い高い金利で借りてたんです。
初めのうちはアルバイトしながら返してたみたいなんですけど
とても追いつかなくて…

利子すら払うこと出来なくなった…」


手に持っていたレジ袋が
バサリと音を立て
足元に滑り落ちる。


優斗が、泥沼に落ちて行く姿を想像してしまった。
底なしの真っ黒な地獄へ…


「ゆう…と…」

「…もう、限界だったんです…
800万の借金が、いつの間にか1300万にも膨れ上がり
とても返済なんか出来ない状態になって…

優斗さん、言ったんです。
『死にたい…』って…」


優斗がそんなに追い詰められてたなんて…


「…だから、自殺を?」

「ええ、優斗さんが死ぬのなら
私も一緒に連れてって欲しい…
そう頼んだんです。

彼が居ない人生なんて
私には、なんの意味も無いから…
2人で死ねるなら怖くない」


由香さんが優斗を想う気持ちは本物なのだと
確信した今
私には、由香さんを恨む気持ちなんて
これっぽっちも無かった。


もし聖斗が、その立場だったら
きっと、私も…