でも、大金と引き換えに手に入れた資料は
全くのデタラメだった…


そして、その研究員と名乗る男性とは
連絡がつかなくなる。


それを知った優斗は焦った。
銀行やカード会社からお金を借り
なんとか300万を用意し
バレること無く会社に返したそうだ。


そんな大変なことをしてしまったのに
優斗は由香さんを責めなかった…
それどころか
由香さんに心配を掛けた自分が悪かったのだと
謝ってきた。


その優しさは、由香さんにとって地獄だった…
責められ、怒鳴られた方が
どれだけ楽だったか…


由香さんは耐え切れず
優斗に別れを告げ
会社を辞めて姿を消した。


「でも、あのお金のことが
ずっと、気になってたんです…

本来なら
私が支払わなくちゃいけないのに
優斗さんに申し訳なくて…

それで、彼の誕生日の日の朝
優斗さんに電話したら…」


「誕生日…?」


そうだ…忘れもしない。
あの誕生日の日から優斗は居なくなったんだ。


「はい…
"おめでとう"を言いたかった。
そして、謝りたかった…」

「それで、会ったんですね?」

「ええ、私…本音を言えば
優斗さんのこと、まだ好きでした。
出来ることなら
またやり直したいって思ってたんです。

でも、彼に会って話しを聞いたら
結婚したって…
ショックでした…」


由香さんの大きな瞳に、また涙が溢れる。


「自分の勝手で別れたのに
こんなこと言う資格ないかもしれませんが
悔しくて…
何もかも嫌になって
死にたいって…思ったんです」


由香さんの顔は真剣そのもの
優斗のこと、本当に好きだったんだ…


でも…
由香さんの話しを聞いて
何かが違う…
そう感じた。


「あの…優斗に電話したのは
優斗の誕生日が初めてだったんですか?
その前にも、その…掛けてきてません?」

「いえ、誕生日の時だけです」


じゃあ、優斗の様子がおかしくなった
夕食を食べてた時に掛ってきた電話は…
誰からだっんだろう…