ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】


「あの…言ってる意味が
良く分からないんですけど…」


すると、1人の若い警官が
少し離れた長椅子に座り
泣いている女性を指差すと


言い辛そうな顔をして
「あの方です…」
と、小声で言う。


そして、年配の警官が私に封筒を差し出し
「奥さん宛ての遺書です。
調べは終わってますので、お返しします」
と言いい、私の手に封筒を握らせた。


「優斗さんが、お話し出来る様になったら
また、伺います」


軽く会釈すると
警官は乾いた足音を立て去って行く…


その遺書から
再びその女性の方に視線を戻すと
彼女は立ち上がり
こちらに向かって歩いて来る。


でも、その足取りは
フラつき、おぼつかない。


ようやく私たちの前に立った女性は
やつれた青白い顔をして
「申し訳ありません…」
と、聞き取れないほどの小さな声で謝ると
深々と頭を下げる。


「どうして…」

「私が悪いんです…
どうか、優斗さんを責めないで下さい」


何を言っていいのか分からず
黙り込んでしまった私の背中を
伯父さんが優しく摩ってくれ
その女性に話し掛けた。


「優斗とは、いつからのお付き合いだったのかね?」

「彼とは、中学の同級生で
優斗さんが大学生の時から…
社会人になっても
お付き合いしてました…」

「中学…?」

「はい、美羅さんとも
一度だけ、お会いしたことがあります」


この、上目使いで見つめる瞳に
見覚えが有った。
どこで…

……?


あっ…

思い出した…
この人は…
あの、思い出の海に一緒に行った
優斗の同級生…


確か…名前は…


「由香…さん?」

「…はい」

「優斗と…付き合ってたなんて、知らなかった…」

「彼が製薬会社を辞める時
お別れしたんです…」

「別れたのに、今になって…なぜ?」


由香さんは、涙を拭きながら
絞り出す様な声で
話し出す…


それは、優斗が伯母さんの反対を押し切ってまで
就職したがった製薬会社での
出来ごとが
全ての始まりだった…