泊っていけば?と言う智可の誘いを断り
タクシーを呼んでもらった。
…優斗が帰って来て
誰も居なかったら
また、どっか行っちゃう様な気がして…
なるだけ、マンションに居たかった。
蒸し暑い湿った空気を吸い込み
それを、ため息にして吐き出した私に
雅史さんは冷静な口調で話しかけてくる。
「聖斗にも言ったんだけど
聖斗と瑠菜ちゃんのDNA検査した方がいいと思う。
このまま、曖昧にしてくのは
良くない」
「DNAって…そんな…」
「瑠菜ちゃんを引き取るつもりなら
なおさらだ。
自分の子じゃないかもって疑いながら
瑠菜ちゃんを育てるなんて
いいはずないだろ?
これは、医者としてじゃなく
親友としての俺の気持ちだ。
美羅ちゃんからも
検査する様に言ってやってくれ…」
「……」
隣に立ってる智可までも
大きく頷いてる。
私は何も言えなかった…
雅史さんが言ったことは
正しいのかもしれない。
でも、あんなに可愛がってる瑠菜ちゃんが
自分の子供じゃないなんてことになったら
聖斗は立ち直れるだろうか…
理絵さんと別れても
自分で引き取り育てたいとまで言ったんだ…
ショックは計り知れない。
タクシーのヘッドライトが近づいてくると
雅史さんは一通の封筒を私に渡し
「病院の紹介状だ。
ここは個人病院だからね
明日、土曜日でも午前中は診察してる。
行っておいで」
と、ニッコリ笑った。
「有難う…」
タクシーに乗り込み
携帯を取り出す。
聖斗の携帯番号が、ディスプレイに表示されたが
ボタンを押すことが出来なかった。
まだ、私の中で迷いがあったから…
聖斗の気持ちを受け止めてあげられるだけの
覚悟が出来てない…
そして、もう一つ
私には大きな不安があった。
そのことが、聖斗への電話を
躊躇させてたのも事実
…大丈夫
きっと、大丈夫だよね…
明日、この不安が解消されたら
一番に聖斗に会いに行くからね。
流れて行く街の明かりを見つめながら
私は心の中で
何度も、そう繰り返していた。


