ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】


言葉も無く
呆然と立ちつくしてる私の体を押しのけ
勝手に部屋に入って来る理絵さん。


「あの…理絵さん?」

「今まで瑠菜のこと見てもらってたし
お礼よ」


そんなの嘘だ…ありえない

もしかして、平気な顔してたけど
昨日のこと気にしてるのかもしれない。
聖斗にバラされるのが怖いのかも…


だから私の機嫌を取りに来たとか?


「ねぇ、熱いお茶入れてくれる?
それと、小皿にお醤油」

「あ、はい」


また理絵さんのペースに巻き込まれていく…


お寿司を食べながら
常に笑顔の理絵さんが気味悪い。


「美味しいわね!」


確かに美味しい特上寿司だったけど
私は理絵さんが、何か企んでいるんじゃないかと
ビクビクしてお寿司が喉を通らない。


お茶で無理やりお寿司を喉に流し込む。
すると、掛け時計から
12時を告げるメロディーが流れ出した。


「……!!」


その時、私はやっと気付いたんだ…


聖斗が…聖斗が、来る…

全身の血が引いていく…


理絵さんが居るのに…
ここに聖斗が来たりなんかしたら
絶対に、ヤバいよ。


もう時間が無い…
なんとか聖斗に連絡しないと…


私は理絵さんが瑠菜ちゃんの方を向いているのを確認すると
焦る気持ちを抑え
携帯を手に持ち立ち上がる。


すると、理絵さんの低い声が
私を呼び止めた。


「まだお寿司残ってるわよ。
どこ行くの?」

「あの…、ちょっと、トイレに…」

「トイレ?携帯持ってトイレ行くの?
高校生じゃあるまいし
携帯、置いて行きなさいよ」

「でも…」

「まさか…私がアンタの居ない間に
携帯、盗み見するとでも思ってるの?」

「そんなこと…」


あぁ…、もう時間が無いのに…


そして


ピンポ~ン


間に合わなかった…