「もー、ひどーい!!」


私がムッとして
聖斗を上目づかいで見上げると
スーッと、差し出された左手


「来いよ…」

「うん」


軽々と引き上げられ
聖斗の横に座る。


「聖斗、この傷
あの時のだよね?」


彼の左手の甲に微かに残る古傷を、そっと撫でてみた。
普段、ほとんど気にならなかった
消えそうな傷跡


「この傷見るたび
あの日のこと思い出してたよ」


長い年月が流れ
私たちは大人になったけど
ここから見える景色はちっとも変ってなくて
当時の2人に戻ったみたいだった。


目を閉じ
潮の香りを胸一杯に吸い込んだ時
聖斗が私の肩を強く抱いた。


「…美羅、もっかい、ここから始めよう。
今度こそ美羅を離さねぇ…
ずっと、お前の傍に居る。
どんなことがあっても
美羅を守る」

「聖斗…」


鮮明に蘇ってくる
あの時の聖斗の温もり
…同じだね。
私たちは二度目の"約束"を交わし
深く長いキスをしたんだ…


・・・


「もう出るか?」

「うん…」


私たちは海岸沿いにあったホテルの一室で
覚悟の時を迎えようとしてた。


熱めのシャワーを浴び
芯まで冷えた体を温め
浴室のドアを開けると
バスローブを羽織った聖斗が立っていた。


少し恥ずかしくて
両手で体を隠そうとする私を
タオルを片手に
クスリと笑う聖斗


「ほら、拭いてやるよ」

「い、いいよ…自分で拭くから…」

「言うこと聞け!バカ」


真っ赤になる私を横目に
濡れた体を優しく拭いてくれる。


でも、それは初めの内だけで
直ぐにタオルは床に落ち
代わりに聖斗の指と唇が
私の肌の上を漂う


明る過ぎるほどの照明が
私の全てを露わにしていく…


広くて大きな洗面所の上に私を座らせた聖斗が
白いバスローブを脱ぎ捨てた。


「お前の知らない世界、見せてやるよ…
好きなだけ、乱れろ…美羅」