…あの、聖斗を怒らせた日から10日
聖斗は私と口を利いてくれない。


当然と言えば、当然


聖斗にしてみれば
いきなり帰ると言い出した私が
許せないんだろう…


お風呂に入り
部屋に戻ろうと階段に足をかけた時
玄関の扉が開き
聖斗が帰ってきた。


「聖斗…お帰り…」

「……」


完全、無視!


私の横を、そ知らぬ顔で通り過ぎていく。


「ハァーーッ」


ため息しか出ない。
まだ怒ってるんだ…


部屋に戻り
ドライヤーで髪を乾かす。
頭の中は、聖斗のことばかり
もう忘れようと思ったのに
全然、ダメだ…


髪を梳かそうと、ブラシを持ち
鏡を覗き込んだ私は
一瞬、心臓が止まるかと思うくらい驚いた。


鏡に映っていたのは
聖斗…


「な、何?いつ入ってきたの…聖斗」


ドライヤーの音で
全然、気付かなかった…


聖斗は無言で
ジッと、私を見てる。


「せ…いと…?」


私を見下ろす眼つきは
冷ややかだ。


「美羅、ちゃんと説明しろ。
なんで帰るなんて言ったんだよ」

「それは…」


口ごもる私の前にドカリと座り
私の頬に右手を当てる。


「言ってみろ」


私の頬を包む
聖斗の手のひらが暖かくて
胸がキュンとした。