ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】


智可も驚いていたが
雅史さんの驚き様は
ハンパなかった。


真っ青な顔をして
見開いた目は鈍く光ってる。


「…マジ…かよ。
そんな…そんなことって…
それが事実なら、俺は聖斗に
とんでもないことを…」

「雅史さんのせいじゃない。
黙ってた私が悪いの」

「あんなに美羅ちゃんを好きだって言ってた聖斗に
俺は、理絵ちゃんと結婚しろって
怒ったんだ…

それが美羅ちゃんの為だって…
聖斗が結婚を決めたのは
俺が説得したから…」

「そんなことない。
私が聖斗を信じてあげられなかったから
全て、私の責任なの」


誰のせいでもない。

これが、私たちの運命…


「ねぇ、美羅
今からでも聖斗君と話したら?」


私は智可の言葉に
首を振った。


もう、遅い…
何もかも、遅すぎた…


「私ね、結婚するの」

「「えぇっ!!」」

「優斗と…結婚するの…」


一度放した手は
二度と、繋がれることはない。

すれ違った心は
再び、寄り添うことはないんだ…




一睡もせず、迎えた朝

病院に戻るという雅史さんに
私も連れてって欲しいと頼んだ。


「聖斗の赤ちゃん…見たい」

「無理しなくていいよ。
辛くないの?」


心配してくれる雅史さんの腕を引っ張り
赤ちゃんの居る
新生児室へと向かう。


廊下を曲がると
ガラス張りになってる新生児室の前に立って
中を覗き込んでる人が居た。


「聖斗…」


その横顔は
とても幸せそうに微笑んでいた…


この笑顔を
壊したくない。


なぜだろう…

その時、素直に
そう思えた。