「珍しく弱音吐いて
俺はどうしたらいい?って、聞いてきた。
だから俺は、言ったんだ…
美羅ちゃんのことは
諦めろって…」
「諦め…ろ?」
「あぁ…
それが一番いいと思った。
理絵ちゃんが聖斗の子を妊娠して
美羅ちゃんは他に好きな人が出来た。
聖斗の気持ちは分かるけど
どうしようもない…」
その後も聖斗はお酒をあおり
一人、考え込んでいたそうだ。
そして、朝
雅史さんを起こした聖斗は
ポツリと一言呟いて
帰って行った。
「なんて…言ったの?」
聖斗が言った言葉は
聞かずとも、分かってた。
でも、あえて私は雅史さんに尋ねたんだ…
「"俺、理絵と結婚するよ"
それが、一晩考え抜いた聖斗の答えだった」
やっぱり…
「理絵ちゃんの親が
毎晩の様に家に来て
聖斗の両親に結婚を迫ってたしな…
お袋さんは体調崩して
寝込んだりしてて
聖斗もギリギリの状態だったんだよ。
それからすぐ
聖斗と理絵ちゃんの結納で
やれやれと思ったら
その夜、お袋さんが倒れて入院
で、美羅ちゃんが帰って来た」
「うん…」
「俺は、ちゃんと美羅ちゃんに
ことの成り行きを話せって
聖斗に言ったんだけどな
結局アイツ、なーんも言わなかったんだろ?」
私が頷くと
雅史さんは困った顔をして
ため息を漏らす。
雅史さんは、私が帰って来て
聖斗の気持ちが揺らいでいたんじゃないかと、感じてたそうだ。
「聖斗が入籍する前の日
美羅ちゃんを病院に迎えに行った聖斗が
同棲してた人のこと聞いたの、覚えてる?」
「…えっ?
あ、そう言えば…」
「その人の悪口とか言ったんだよな」
そうだ…
何ヶ月も一緒に住んでて
何もしないなんて
それでも男か…
確かに聖斗は、そう言った。
「あれは、聖斗が美羅ちゃんの気持ちを確かめる為に
ワザと言った悪口だったんだよ」


