ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】


そして…
それから、約一ヶ月
8月中旬


蒸し暑い熱帯夜

真夜中の電話で起こされた私たちは
車で病院に向かっていた。


伯父さんは落ち着きが無く
伯母さんは、終始笑顔
優斗は寝むそうに、あくびを繰り返してる。


私はというと…
無論、楽しくも嬉しくも無く
とうとう来たこの日を
恨めしく、ただ、ため息を漏らすのみ


「おめでとう御座います。
元気な女の子ですよ」


看護師さんの明るい声に
皆が歓声を上げた。


聖斗が…父親になった…


立ち会い出産で
既に我が子に対面していた聖斗が
興奮気味に分娩室から出て来る。


「どうだった?」と言う
優斗の問いかけに
薄っすらと涙を浮かべ赤い目をした聖斗が
大きく息を吐き


「やべぇ…俺、マジ感動した…」
と、眩しいほどの笑顔を見せる。


聖斗のこんな嬉しそうな顔
久しぶりに見た…


また一段と、聖斗が遠い所に行ってしまった様な気がした…


皆が赤ちゃんの姿を見ようと
新生児室に向かい歩き出し
私も仕方なく
その後につづく


すると、分娩室から出て来た人に呼び止められた。


「美羅ちゃん」

「……?」

「久しぶりだね。
元気にしてた?」

「…雅史さん」


そう、この病院は、智可の実家
理絵さんの赤ちゃんを取り上げたのは
兄の雅史さんなんだ。


「ちょっと、いい?」

「…はい」


私に廊下の長椅子に座る様に促すと
彼も隣に腰を下ろす。


「さて、何から話そうか?
やっぱり、聖斗のことかな?」

「……」

「聖斗のこと、恨んでる?」

「あ、…いえ」

「じゃあ、まだ好き?」

「えっ?」


驚いて顔を上げた私を
雅史さんは
穏やかな顔で見つめていた…


「そんなこと聞いて…
どうするんですか?」