えっ…?


「美羅ちゃんよ!
なんて酷いことするのよ!
赤ちゃんに何かあったら
あんたの責任だからね」

「あ、ちが…」

「美羅、本当か?
本当に美羅がやったのか…?」


疑惑の視線が
私を貫く


「聖斗…」


どうして?
聖斗は信じるの?
理絵さんの言うこと信じるの?


「私、何も…」

「嘘つかないで!
あんた、赤ちゃんが…私と聖ちゃんの子が、憎いんでしょ?
だから…あんなこと…」


聖斗の目が…私を責めてる…
私がやったって思ってるんだ…


「聖斗…聞いて…
あのね、私…そんなこと…」


聖斗に疑われてることが
ショックで
事実を話そうとしても
焦って言葉が上手く出てこない。


「もういい。
美羅、出てってくれ…」

「えっ?」

「お前が居ると、理絵が興奮する。
部屋から出てってくれ…」


聖斗が私を睨みつける…


「…邪魔なんだよ」


そう言って
理絵さんを抱きしめた。


あ…


もう、何も言えなかった。


フラつく足で部屋を出ると
優斗の部屋のドアを開ける。


放心状態のまま
暫く呆然と
その場に座り込んでいた。


救急車のサイレンの音が家の前で止まり
階段を駆け上がってくる足音
そして、理絵さんの泣き声と共に
再び部屋の前を通り過ぎていく
いくつもの足音…


サイレンの音が聞こえなくなった時
初めて涙が出た。


私は…邪魔…


信じてもらえなかった…
聖斗は理絵さんを信じたんだ…


当然と言えば、当然。
聖斗の奥さんは理絵さんなんだもんね。
私の言うことより
理絵さんの言うこと信じるのは
当たり前だよね…


でも悲しい…

堪らなく、悲しい…


聖斗が結婚したって知った時より
悲しかった。


泣き疲れ、涙も枯れ果て
朦朧とした意識で、宙を眺めていると
私の名を呼ぶ声が
微かに耳に届いた。


「美羅…」