聖斗が言った様に
どこか遠くに行ってしまいたかった…


でも、今の私が戻る場所は
この家しかない。


またバカなまねして
伯母さんを悲しませるわけにはいかない。
それに、黒木さんも居ない。


玄関の扉が
いつもより重く感じられる。


階段を上がると
優斗の部屋から音楽が漏れ聞こえ
私は無意識に足を止めてた。


優斗、居るんだ…


幼かった時
聖斗を好きになったと自覚した時
私は決断したんだ…


もう、優斗の部屋には行かないと…


「ゆう…と…」


ドアが開くと
そこには優しい笑顔があって
私のズタズタになった心を
暖かく癒してくれる。



堪え切れず
ポロポロと零れ落ちる涙


「どうした?美羅…」

「優斗…私、どうすればいい?
どこに行けばいい?
私の居場所は、どこにあるの?」

「何があった?」

「もう…私、行く所…無いよ」


優斗の大きな体が
私を包み込む。


「俺が居るだろ…
俺は、美羅の味方だ。
だから泣くな…」

「うぅっ…、あぁ…ん」


優斗は何も言わず
泣いてる私を、ただ、抱きしめてくれていた。


ずっと… ずっと…


それは、思いの外
居心地が良くて
できるものなら
このまま抱きしめていて欲しいと思うほど…


「あのね…優斗…話しがあるの…」


聖斗とのことを話そうと思った。
優斗なら、信用できる。


でも、不安はあった。
弟と関係があったと聞いたら
どう思うだろう…


そりでも黙っていることは
罪なんじゃないかと
後ろめたさが後押した。


「私ね…どうしても忘れられない人が…」

「分かってるよ」

「えっ?」


優斗…気付いてたの?