「…せい…と」

「そこ、座っていいか?」

「あ、うん」

「今頃、飯か?」

「うん」


顔を上げることが出来なくて
ひたすら、おにぎりを口に入れる。


「何、慌てて食ってんだよ。
ちゃんと噛んで食えよ」

「…うん」


聖斗は至って冷静で
動揺してるのは私だけ。
驚くほど他愛もない会話が続く。


「伯母さん寝てたけど
もう起きてるかも
覗いてきたら?
私、ここに居るから…」


すると聖斗は冷ややかな目をして言う。


「今日は、お袋のとこに来たんじゃない。
美羅に会いに来たんだ」

「私に…?」

「あぁ、どうして居なくなった?
あの日、お前…
家に居たんだよな?」


私は、コクリと頷いた。


「見たのか?」

「見た…」

「やっぱり、そうか…」


腕を組み、天井を見上げる聖斗


「もう、過去のことだよ…
今更その話ししても
どうにもならない。

結婚するんでしょ?
私のことより
理絵さんや、お腹の赤ちゃんのこと
考えてあげて」


聖斗の眉が
ピクリと動いた…


「そんなこと…
平気な顔で言うなよ」


聖斗のその一言で
私の中で何かが弾けた…


「…平気な顔?
これが、平気な顔に見える?
酷いよ!聖斗!

私がどんな気持ちで
理絵さんを抱く聖斗を見たと思ってるの?
私以外の女は抱かないなんて
嘘ばっかり!

聖斗は、大嘘つきだよ!!」

「美羅…」

「聖斗なんて、大嫌い!!
顔も見たくない。
早く結婚でもなんでもすればいい」


聖斗にペットボトルを投げつけ
私は薄暗い廊下を走りぬけた。


外に飛び出すと
激しい雨が
一瞬にして私の体を濡らす。


「美羅!!待て!!」