どの位、私たちは抱き合い泣いてたんだろう…
暫くすると、黒木さんは私の体を離し
私に渡したい物があると
立ち上がった。
タンスの一番上の引き出しから取り出し
私に差し出された
青い小さなビニール袋
「開けてみて」
言われるまま袋を開けると
中から出てきたのは
黒いシミの付いた可愛い紙袋
「どうしも、君にこれを渡したくて…」
紙袋の中身を見た私は
余りの驚きで、体が固まった。
「これは…」
「うん。
事故直後、僕は乗用車に乗ってた人を助けようと
助手席のドアをこじ開けたんだ。
そこには、意識が朦朧とした女性が居て
僕をレスキューの人と勘違いしたんだろうね…
この紙袋をポケットから取り出して
『美羅に…これを、美羅に…』って
うわ言の様に呟いてた。
僕はそれを受け取り
彼女を車から出そうとしたけど
足が挟まってて…
それからすぐ消防車が来て
彼女を助け出してくれたんだれど
その時は、もう…」
ママ…
ママの最後の言葉は
私の名前だったんだね
私が、あのクリスマスの日
サンタさんにお願いしたのは、ドールハウス。
そして、もう一つ
別売りだった、ピンクウサギの彼氏
ブルーのウサギ
売り切れで、友達も誰も持ってなかった。
欲しくて、欲しくて
たまらなかったブルーのウサギ
ママ…ありがとう…
確かに受け取ったからね…
ブルーのウサギを握りしめ
声を上げて泣く私を
今度は、黒木さんが抱きしめてくれた。
「ごめんね…
もっと早く渡してあげたかった…
勇気が無かったんだよ。
君に会いに行く勇気が…
これだけ渡すだけじゃあ
君に許してはもらえない。
そう思った。
だから…」
黒木さんは、そう言うと
何かをそっと、私の手に握らせた。
「僕の懺悔の気持ちなんだ。
受け取って欲しい…」
それは、通帳とキャッシュカードだった。
その通帳の名義は
『江川美羅』になってて
預金額は、800万円
毎月、数万円
その間にも、少しずつ入金されてた。


