あの時のまま…
薄暗い電気に照らされた
雑然と積み上げられた荷物の山
確かこの辺だったかな…
遠い記憶を呼び起こし
聖斗があのアルバムを取り出した場所を探る。
ダンボール箱の影になり
手元が良く見えない…
「あっ…これは…」
微かな光の中
私が手にしたのは
とても懐かしい物だった。
ドールハウス…
ママとパパが事故にあったイヴの夜
サンタさんがプレゼントしてくれたと
信じてたドールハウス…
数年後
これはママからの
最後のプレゼントだったのだと
伯母さんに聞かされたんだっけ…
暫しアルバムのことを忘れ
そのドールハウスを開け
中の人形たちを手に取り眺めていた。
色違いのウサギの家族
パパウサギはグリーン
ママウサギはオレンジ
娘のウサギはピンク…
そうだ…
娘のウサギには彼が居て
それだけ何故か別売りで
どうしても欲しかったけど
売り切れで、とうとう手に入らなかったんだ…
確か…ブルーのウサギだった…
あっ!!
思い出に浸ってる場合じゃなかった。
アルバムを探さなきゃ…
それから数十分
やっと奥の棚に見覚えのあるアルバムを見つけた。
「これだ…」
電気の下でアルバムを広げ
あの手紙を取り出す。
何故か手が震え
呼吸が早くなる。
何度も何度も
手紙を読み返し
夢の中でママが私に言いかけた意味を考えるけど
まったく分からない…
"手紙を…見て…"
そう言ったよね。ママ…
あれは、ただの夢だったのかな…
意味なんて無かったのかな…
すっかり意気消沈し
諦め、手紙を封筒に戻そうとした時だった。
目に飛び込んできた文字に
鳥肌が立つ…
この手紙の消印…
どうして名古屋になってるの?
ママは名古屋で聖斗を産んだってこと?
名古屋って言えば…
京子さん?
ママは京子さんのとこに居たってこと?


