ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】


「美羅…
そのことなんだけどな…
もう少し待って欲しい…」


ついさっきまでの笑顔は一変。
眉を顰め
視線を私から手元のワイングラスへと移す。


「どうして?」

「一応、別れ話しはしたんだ。
でもアイツ
別れたくないって、ゴネてんだ…」


やっぱり…


「別れ…られるの?」

「もちろん。俺はそのつもりだ。
だから、もう少しだけ時間をくれ…
美羅が大学を卒業して帰って来る頃までには
なんとかする」

「ホント?」

「あぁ…」


聖斗の言うこと
信じるしかないのかな…


今まで待ったんだもん。
もう少しくらい我慢しなきゃ…
指輪までプレゼントしてくれたんだ。
聖斗が私を裏切るなんてこと、無いよね…


「分かった」


私は小さく頷いた。




そして、3月1日
下宿に戻る前日の夜


暫く聖斗に会えないから
一緒に過ごしたかったのに
薬局の人たちと飲みに行って
中々帰って来ない。


どうして今日飲みに行くかなぁー…


聖斗の部屋で時計とにらめっこしてると
12時近くになって
ようやく帰って来た。


でも、聖斗は酔っ払ってベロベロ。
私のことなんか目もくれず
ベットに倒れこむと
数秒で寝息をたて熟睡状態。


ありえない…
聖斗のバカ!!


気持ちよさそうに眠ってる聖斗の寝顔を見つめながら
どんな夢見てるのかな…
と、彼の髪を撫でた時
ふと、脳裏をかすめた
ある疑問。


ママの夢…

あの夢には、何か意味があったんだろうか?


考え出すと
居てもたっても居られなくなり
私は階段を駆け下りていた。


静まり返ったリビングを抜け
お風呂場を通り過ぎる。
そして
あの日以来、開けることのなかったドアに手を掛けた。


カチャッ…