そして俺らは走り出す


やがてなんとか食べきると、桜音は大きく息を吸って一言。


「紘嵩君! いきなり何するの!?」


当然、怒っていた。


「あー悪ぃ…。

食べたいって言ってたから、食べさせてやりたいなって思って」


「ふぇ?」


意味が分からなさそうに首を傾げる。


「だってこうでもしないとお前、遠慮して絶対食べねぇじゃん」


「そ…それは、だって…」


本当のことだとでも思ったのか、桜音は続きを話さない。


「で、感想は?」


「…おいしかった」


「よろしい」






この時、俺は気付いてなかった。

このときの俺の行動が、ある事件を巻き起こすだなんて……



いや、もっと怖いと思うような事件(例に出すなら強盗とか)
だって世の中にはありふれてるし、全国区的に見れば全然たいしたことのない
小さなことなのかもしれない。


でもこれは、俺という1つの、1人の人生の中では
どうしようもなく忘れることの出来ない、大きな事件だったんだ。