そして俺らは走り出す



「紘嵩君はどういうの頼んだの?」


あぁ、そういえば言ってないな…。


言ってないのは桜音に対してもなんだが、他の人にも言ってなかったように思う。


「マロンカスタードだよ、ほら、あそこに大きく張り出されてるだろ?」


そう言って俺は張り出されている広告を指差す。



「あれなんだ~」


その広告を見て桜音は、今度わたしもあれ食べようかな、とか言っている。



ふむ。

俺はあることを思いつく。



よし

「桜音」

「へ? ……んぅ!?」


振り向いた桜音の口の中に、俺は持っていたクレープを突っ込んだ。


「ふぃ、ふぃりょひゃかひゅん?」
(訳:ひ、紘嵩君?)

「ぷっ」


「っ!!!」


「わ、悪い悪い…

食えよ、それ」


ていうか、こんなことされちゃあ桜音としては食べるしかないだろう。

まさか、口から取り出すわけにもいくまい。


俺の言葉を聞くと、口に含んだ分を噛み切り
その量が多かったのか口を一生懸命もぐもぐさせている。