そして俺らは走り出す

「あぁ、アイツが遅刻すんのはいつものことだから先に…」

行ってよう、という言葉が途切れたのは












後ろを向いたその先に健がいたから。



「ひでぇーなぁ、置いてくとか。

俺もう来てんのに」



「あ」
「中路くんっ!」


吃驚。


人間本気で吃驚すると声出ないんだな。


初めて知った。

ていうか知りたくなかった。


「ん? どした?

愛しの俺に会えた嬉しさで固まっちゃった…とか?」


固まったまま動かない俺に、健がそんなことを言ってくる。


つーか…


「誰が愛しのだよ。

キモいっつの」


「うわ、出た!

紘の毒舌!!」



いや、今のは突っ込んだだけだっつの。


ていうか、強いていうなら始めに変なことをいう健が悪い。


だいたい、出たっていうほど俺毒づいたことねーし。