「紘嵩君?」


その、きょとんとした顔に惹きつけられるように俺はハッとする。


「え、あー…

で、どうするんだ?」


「うん、紘嵩君がいいなら…」
「行くっ!!」



………ん?

「あたしも行きたーい!

いいでしょ? 紘!」


聞こえてきた声は、桜音とは別のもので。


振り向くとそこには梨沙がいた。



「お前なぁ…」

「別にいいでしょ? ねぇ桜音」


「へ? あ、うんわたしは別に…」


そう言って桜音はチラリと視線を俺によこす。

それは多分俺がOKといってないから言い切れないだけであり、本当は一緒のほうがいいのだろう。


はぁ……ったく。


「じゃあ」
「俺も行くー」

「「…………。」」

しょうがないから、と続くであっただろうその言葉は、他に聞こえてきた声によって止められた。


今度は3人揃って無言になる。


その声は勿論健のもので。


「別にいいだろ?」


ま、女子2人の中に俺1人ってのもやだし。


俺は、腹を括ると1つため息をついた後言葉を発した。


「…分かったよ、土曜はこの四人で行く」


やったぁ!とかよっしゃーとか聞こえてくる声は無視して。


「但し、奢るのは桜音だけ!」


その言葉に、女子2人はすごく驚いたような顔をする。


健は初めから分かっていたかのように、平然としていた。


「今日こいつがクレープ食えなかったのは、俺がちゃんと自転車の整備をしてなかったせいであって
そのためのやり直しだ。

それぐらい、当然だ」


「紘嵩君…わたし、自分の分ぐらい払うよ?」


そういう桜音の瞳は、もともとはわたしが悪かったんだし…という訴えが入ってるようにも思えた。


「いーから。

じゃ、それでいーな?」


最後まで梨沙は不服そうだったが、そこは見て見ぬフリ。

ノーとは言わせずにさっさと時間、待ち合わせ場所を決めるとそこで解散した。