そんな俺を余所に、桜音は一生懸命に何かを言おうとする。


「あっ…あのねっ!

さっきのは体調悪いとかそーゆーんじゃなくて…


その……」


……なんだ?

何を言いたいんだ?


「だからねっ!
別にび、病気って訳じゃなくて
あの…あ、歩いて行けるしっ

あぁっもう!」


真っ赤になった桜音は、とうとう俺の態度に脱力したようで。


「しょ、しょうがないことなのっこれは!


あぅ~…
紘嵩君って女の子の兄弟いないの…?」


「あ」


そこまで聞いて、やっと桜音の言いたいことが分かった。


桜音の顔は真っ赤のままで、頭からは湯気が出そうだ。

桜音も俺が気付いた事が分かったようで。


さっきまでの困ったような顔はなく、今は俯いたまま俺の服の裾を掴んでいる。


あー…
そりゃ気まずいわな。


「あっあの、だからね?

病気じゃないし、歩いて…」

それでも頑張って言葉を紡いでくコイツに
惚れない男はいるのだろうか。