近くまで行くと、桜音はすぐに俺に気が付いたようで(というか、ずっと俺がいってから戻ってくるまで見られていたらしい)。

「あ、おかえりー」

と、声をかけられた。


「ん、じゃあ行くか」


うんっと元気よく返事をして、桜音は俺の隣に来るが
俺は少しも動こうとしない。

その様子を見て、桜音は不思議そうに首を傾げる。


「行かないの?
紘嵩君」


「後ろ、乗れ」



「………………。」

 チッチッチッ


「ふえぇ!?」

チーン!

「む、むむむむ無理無理無理無理無理!

そんなっそそそんそんそんっ」



「落ち着けって」


俺にぺチンとおでこを叩かれたせいか、少し落ち着いた様子の桜音。


「えっでもでもでも!」



それでも意味分かんない!と言いたげなその表情。


「でもじゃねーよ。

お前さっき一度ぶっ倒れてるだろが。

そんな奴を歩かせるわけにはいかねーよ」


そう強く言い切るが、桜音は未だに肯定の返事を示そうとしない。


「ったく…。

どうしても歩くってんなら俺はこのままかえっぞ」


その言葉にはさすがの桜音も驚いたようで。



えっ…と声を漏らし、俺の服の裾を掴んでくる。



……何すか、その行動。


めちゃくちゃ可愛いんですが。


その可愛い行動に加えて、何かにすがるような表情。


コイツ、俺の心臓壊す気ですか?



不意打ちのその表情と行動に、俺は堪らなく紅くなった顔を逸らす。