――「乃絵ごめんな、兄ちゃんが悪かった!」
あたしの悲鳴を聞きつけて、
“本物”のお兄ちゃんが部屋に飛び込んでから数分後、
あたしの心はまだ放心状態だった。
「今朝早くに目が覚めたから、コンビニに行ったんだよ。
乃絵に起こしてって頼んだことすっかり忘れた!本当ごめん!」
お兄ちゃんはあたしをソファーに座らせて、
その次にさっきベッドで寝てた男の人に灰皿を渡した。
「こいつ、カイ。
モデル仲間なんだ」
“カイ”と言う人は、窓際でタバコを吸いながらこちらを向いている。
…モデルかぁ。
確かに、スタイルが良いのは見てすぐにわかった。
短髪のお兄ちゃんより長くてほんの少し茶色い髪が、
目元にかかっている。
「学校は?」
“カイ”の低い声があたしに質問してきた。

