だいじの近くにある名前

背中の冷えが苦痛になるころ、ユミがこちらにもどってきた。

右手で目のふちを強くおさえ、ゆっくりゆっくり歩いてくる。
遠くのアキラは立ちどまり、こちらに背中をむけていた。

「ごめんね」

そういうとユミは、おれの横にひざをついた。

首が痛くて、ひねるのさえもひと苦労。
ユミは右手でおれの頭をなでている。

おれの手に重なった、ユミの左手の指に冷たい銀の感触はない。

ユミは笑いながら泣いていた。