「だいじょうぶ?」

顔の横にひざをついてユミがいう。
おれは半分目をつぶったままうなずいた。

「なんでアキラは、こんなことばっかりすんの。しつこく電話してきたり、関係ない人殴ったり」

ユミの声は怒りというより、ほとんどあきれに近かった。
アキラの表情にかなしみの色が見えてくる。
おれはポケットに手をつっこんだ。

「あの、これ」

そういうのがせいいっぱいだった。
口のなかがずたずたに切れている。
手をのばし、銀の指輪をユミにわたした。
処分しないでもっていた、ユミとアキラの愛のかたち。