せっぱつまったメロディーで、アルバムの一曲目がはじまった。

「あっ、あたし好きかも、こういうの」

曲名は『フール』。

ユミはカラフルな背表紙のCDジャケットを手にとった。
かばんをおいて、ソファーに座る。
今度は逆の角ではなく、ふれるほどにおれのとなりだ。

「日本語の歌詞ついてる?」

ああといって、CDケースをうけとった。
ライナーを抜いてわたしてやる。
ユミはまえかがみになりながら、熱心に読みはじめた。
おれは今年はじめてのホットコーヒーを、プルをあけてちびちびのんだ。

会話はしばらく中断だ。