「これ、体育のときのやつじゃん。もって帰ってきちゃってるんだ」

「拾ったんだよ、ロッカーで。便利だから、寝るときはいてるんだ」

ふーんといって、ユミはジャージを手にとった。
とびきり明るい声でいう。

「貸して。スカートだと、動きづらくて」

おれの返事を待たずに、ユミはエンジのジャージをはいている。
まえひもをきつくしばって、無理やりウエストを調整した。

「やっぱりでかいねー。男のやつって」

なんだかよくわからないけれど、まあ、いいかと思った。

ユミは三人がけのソファーの逆の角に座るという。

「あたしよくわかんないから、てきとうなの選んで」

ばかで幼い男はいつでも、おとなな女に翻弄される。