「もしもし、お兄ちゃん?電話した?」

『したした~。』

「何?」

『俺いなくて寂しくないか?』
「冗談やめて…。寂しくないから…。そんな事のために電話したんじゃないでしょ?」

あたしは、わざとらしく溜め息をついてやった。

『まぁなぁ~。』

だったら早く用件を言えって話だし…。

「何?」

『桜に借りてたDVD返しといて!!』

「桜ちゃんに?何の?」

桜ちゃんは、お兄ちゃんの彼女で、本名は麻倉桜歌(あさくらおうか)ちゃん。あたしの2歳年上で、お兄ちゃんの2歳年下。
桜ちゃんは、桜歌って名前が、好きなんだけど、男っぽくて、呼ばれたくないらしい。
だからサクラちゃんって呼んでるんだよね。


『多分、明日桜が家に取りに行くはず。だから、明日桜が来るまでに家にいてくんない?』

なぜかお兄ちゃんは、桜ちゃんに家の合い鍵を渡してない。

「わかったぁ。後は、桜ちゃんと直接話すからいいよ。」