誰も、出て来ない。 お父さんも、恵さんも。 「…いや……」 昨日の私の嫌な想像が頭を駆け巡る。 …なんでいないの? いつも家にいたじゃん。 まさか、三人で遊んでいるの? …家族、三人で。 「…理沙?」 「流…」 玄関に立ちすくしたままの私を見兼ねて、流がこっちまで歩いて来た。 「どうした?」 「…家に誰もいない…」 俯き、なるべくいつもと同じトーンで言った。 「は?まじかよ?」 流はそう言って、 私と同じようにチャイムを鳴らしては ノブをガチャ、ガチャと回した。