「……南?」

「あっ、いや、……その」




戸惑いを隠せない、その言葉が一番合っているんだろう。

しどろもどろに何かを言い出そうとしている俺を不思議に思ったのか、顔を覗き込んでくる。




そんな、今までマウンドに立っていた彼、成海から、不意に目を逸らしてしまう。








「何もないなら、後は頼むな」




成海はそう言って再び退部届を俺に突き出した。


それを見て、俺はまた黙り込む。







受け取ったら受け取ったで、部長に何を言われるかわからない。


そう思うとやっと出そうとした腕も、一瞬で凍りついたように進まなくなる。