私は昔から、父親が大嫌いだった。
いっつも、殴る・蹴る・叩かれるは、当たり前だった。
ひどい日なんて、学校にも行かせてもらえずに、ずっと父親の彼女の仕事の水商売をやらされたり、寝る事も許されなかった。
そんな親父との、約束が一つだけあった。
私が、殴られようが蹴られようがご飯を抜かれようが水商売の手伝いをさせられようが何をされようが、文句も言わないし誰にも言わない。
その代わり、一樹には手を出さないと、約束したのに・・・。
あいつは、守ってくれなかった。
一樹は私が、殴られている時も蹴られている時も何をされている時も一樹は、見ていた。
ある夜、父親がいつもどおり私をいつも通りに叩かれたり殴られたり蹴られて、一樹もやられいた所を守って、ひどくなっていた。
「お姉ちゃん、ごめんなさい」
一樹は、泣き出した。
「一樹、おいで」
私は、一樹に微笑みながら言った。
「ぅん」
「一樹は、悪くないよ。」
「あの親父が、悪いんだから」
「一樹、お姉ちゃんが仕事できるようになったら、小学校に行く年だから連れっててあげるから、もう少し我慢してね?」
「ぅん」
「だから、泣かないの!」
「僕が、お姉ちゃんを守れないから悪いんだよね。」
「ごめんね、お姉ちゃんにだけ痛い目にあわせて。」
「一樹は、悪くないから気にしないの!」
「わかったら、寝てきなさい。」
「お姉ちゃんは、どうするの?」
「私は、動けないから」
「僕、おばあちゃんに電話してくる」
「駄目!」
「あいつに、何されるかわからない」
「嫌!このままじゃ、お姉ちゃんが死んじゃう」
そう言って、一樹は電話のある所へ走っていった。
「もしもし、おばあちゃん?」
「何だい、かず君こんな時間に?」
「一樹、逃げて!」
「っぇ!?」
「一樹、誰に電話をしているんだ?」
「駄目、一樹には手を出さない約束でしょ!」
「お父さん」
「じゃぁ、お前が代わりに罰をうけるか?」
「あん?」
そういいながら、いつもの倍以上の強さで殴られたり蹴られたりした。
「いたい。痛い。」
「ほら、一樹のせいでおねえちゃん泣いちゃったよ?」
「どうするの、一樹?」
「お前が、罰をうけるか?」
そういいながら、親父は笑っていた。