忘れられない人

「ふーん・・・。そうだよなぁ。でっかい会社だと、人数も多いから、そうなるよな。」

一人でうんうんうなずきながら、

「あ、そうそう。今日はちゃんと持ってきたんだ。」

そう言って凌は財布を取り出した。

「前回、名刺持ち合わせてなくて、湊にさんざん言われたから、今日は会社出る前にちゃんと入れてきたんだ。」

そしてみんなに配る。

私にも差し出すので、

「私はこの前もらったから、いいよ。」

と取らずにいると、

「いや、この間のは汚れてたし、こっちに変えて。」

そして私の手の中に、新しい名刺が入ってきた。

「へぇ~。藤咲さんって、すごい大手の会社なんだねー。」

「いや、バイクが好きで入っただけだから・・・。」

「バイク好き・・・なわりに、細いよね。バイクってけっこう重いのに。」

「細いのは、生まれつき?なのかな。太りたくても、全然体重増えなくて。これでも悩んでるんだけど。」

凌の言葉に、女の子たちは、声をそろえて『いいなぁ~。』と言う。