忘れられない人

凌を中心に囲むように席に着くと、当然のように質問攻めになる。

私は苦笑いしながら、遠目にその光景を眺めていた。

聞きたいことは山ほどあるが、

今は何となく聞く気にもなれない・・・。

やっぱり来ないと思っていただけに、今は心に余裕がなくなっていた。

「藤咲さん、自己紹介~。」

「え・・・。名前は、藤咲凌です。あとは、何を言えばいいの?」

「年とか、勤めてる会社とか・・・。」

「それって、みんな集まってからすればいいじゃん。ね?」

女の子4人に囲まれてるだけに、凌はたじたじだった。

「詳しくは中野さんに聞いてよ。前に2回会ってるし。」

いきなり凌にふられ、私もびっくりする。

そんなに藤咲さんの自己紹介できるほど、よく知ってるわけではないと思うんですけど・・・。

「みんな一緒の会社なわけ?じゃ、湊とも、顔見知り?」

「3人とも私の同期だけど、部が違うから、佐田さんのことは知らないの。本店営業部の人って、いつも会社にいないことのが多いから、まず顔を合わすことってないんだ。佐田さんとだって、ここ何ヶ月か顔見てないもん。」