ソプラノ

俺は立ち上がると、その場を足早に離れた。






休憩室を出て、廊下に出る。





廊下を松葉杖で歩く。





コツ・・・コツ・・・と松葉杖の音が、廊下に虚しく響いていた。






















「あれ?涼ちゃんのお父さん。こんなところでどうしたんですか?」



顔を上げると、涼の担当の看護師がいた。






「あぁ・・・いや」





わたしは、さっき早川弾くんに言われた事を思い出していた。





「さっき、そこで弾くんとすれ違いましたけど、彼のこと、知ってます?」



担当の看護師は、わたしの隣に座ると、笑顔で尋ねてきた。







「あぁ、今さっきまで、ここで話してましたよ」




「そうなんですか。いい子でしょう・・・・?」




看護師は静かに微笑んだ。






“忘れることができるくらいなら、初めから好きにならねぇ!”






弾くんの言葉が今も胸に響いている。







―涼を、本当に大切に思ってくれている人に出会えて、わたしはこんなに嬉しいと思ったことは無かった・・・・。