ソプラノ

「疲れてますか?顔色、悪いですよ」




俺は涼の父親に尋ねると、「座ってください」とソファーに座らせようと促した。






「あぁ・・・疲れているのかな。足が重い・・・」




と、涼の父親はソファーに座る。










「弾くん、だったかな。涼を好いてもらってるのは嬉しいよ。・・・・でも、涼はもう 長くないんだ。君が悲しむなら、涼を忘れてしまった方が楽なんじゃないか?」




涼の父親は、ゆっくりと、静かに言った。








―今、何て?





「忘れてしまった方が楽?」










「楽じゃないです」




俺は咄嗟にそう言っていた。





「楽じゃないですよ!忘れられるくらいなら、初めから好きになんてならねぇ!涼はそ の程度の事であきらめれるような奴じゃねぇんだよ!」



俺は誰に向かって言っているのか分からないまま、敬語も忘れて叫ぶ。





―俺は何のために、涼を“好き”になったんだ?



―何のために・・・・・。







「だから、俺は涼を忘れるなんてことはできません」