バシッ。

「痛っ!」

「ここは、こうだって何度も言ってるだろ!」

現在私は、実習室で鬼教育係こと相原信次に接客の仕方を教わってる。

なんだけど......

全部、ダメだし!
しかも、ちょっと間違えると、すぐに殴るし!

どうせ、わざと厳しくして、私を辞めさせようとしているんでしょ?

残念でしたー!
私は絶対に辞めないんだから!
雅哉様の彼女の座をゲットするまでは、どんなに辛くても堪えてやるわ。

でも......

「何であんたが教育係なのよー!」

「ほぅ。俺に向かってそんな口とは。良い度胸してるな?」

でたー。鬼!悪魔!

って、さっきからいるけどさぁ。

「ほら、もう一回最初から。」

.....えーと......
ニッコリ笑って

「いらっしゃいませ。ご主人様!」

ゴンッ。
後頭部を思いっきり殴られた。

「何でー?」

相原信次は、呆れたような顔をして

「お前は、自分のご主人にいらっしゃいって言うのか?お帰りなさいませだろ!」

あー。そっか。

「はぁ......本当にお前馬鹿だろ?この間抜け。」

馬鹿と間抜けって......確かにそうだけど、別にダブルパンチで言わなくても言いじゃん!

言い返せないけどさ......

「お前、本当に大丈夫か?」
えっ?相原信次が私に優しい言葉をかけてくれてる?

「今日から店に入るんだろ?店の評判落とすなよ。」

......そういう事ですか。

「大丈夫ですー!」
ちょっと拗ねて言うと

ポンポンっと頭を軽くはたき

「頑張れよ。」
ってちょっとだけ、笑った。

......ドキッ

っ!何ドキッとしてんの!?
あ、あれよ。初めて笑顔見たから、ビックリしちゃっただけ。
別に深い意味はない......はず!

ガチャ。

「綾菜ちゃーん。」
実習室に和希さんが入ってきた。

「こんにちは。お疲れ様です。」

「今日からだよね?緊張してるかも知れないけど、リラックスして頑張ってね。」わざわざそれを言いに来てくれたんだ。
軽い人だと思ってたけど、良いお兄さんタイプの人なんだなぁ。