来栖恭太郎は満月に嗤う

「何がおかしい」

ハルパスの背鰭が大きく広がる。

半魚人特有の威嚇行為のようだ。

背中に生えた鋭い棘と棘の間に張った、薄い皮膜。

それが棘が起き上がると同時に広がる。

「おかしいのではない、嬉しいのさ」

愛馬の背から降り、俺は悠然と立った。

来る日も来る日も、俺に恨みを持ちながら行動に起こさず、燻っているしかない使用人達との退屈な日常。

その気になれば常人とは比べ物にならぬ力を発揮できる者達ばかりなのに、この俺に恐れをなして、それすらできぬ。

「よくぞ俺に挑戦する勇気を奮い起こした。その勇敢な行為に敬意を表するぞ、ハルパス」