そんな樹海なものだから、この土地は実質屋敷の主である俺一人のものと言っても過言ではない。

一応敷地は塀によって囲まれているものの、他に立ち入る者がいないのだから、樹海全域が俺の領土。

広大な森林も、美しい水を湛える湖も、そこに生息する動植物も、皆来栖恭太郎の所有物という訳だ。

だが。

そんな所有物の分際で、生意気にもこの俺に牙を剥くものも存在する。

…屋敷の二階の窓から、眼下を見下ろす。

敷地内を、ヒタヒタと歩む者がいた。

先日の調教の傷も癒え、体調を取り戻した我が屋敷の番犬、ライガンだ。

番犬といっても、彼が屋敷の主である俺に忠誠を誓っている訳ではない。

事実、二階にいる俺の姿を見止めると、怒り狂ったように吠え、俺に向かって咆哮を上げた。