来栖恭太郎は満月に嗤う

食事を終え、俺はリルチェッタを引き連れて敷地内の厩舎へと向かう。

「準備は出来ております、来栖様」

クレオが手綱を引いて連れてきたのは、毛並みの良い黒のサラブレッド。

わざわざ名門のファームから買い付けてきた、血統の高い駿馬だ。

しっかりと調教を済ませてある為、扱いも申し分ない。

「どこぞのメイドよりはずっと従順という訳だ」

俺が横目でリルチェッタを見てニヤリと笑うと、彼女は気分を害したようにツンと横を向いた。

それはともかく、今宵は霧も晴れて月が望める。

絶好の散歩日和だ。

「さぁ乗れ、リルチェッタ」

俺はどうしていいかわからない、といった表情のリルチェッタに言う。

「え…?」

うろたえたように瞳をこちらに向けるリルチェッタ。

「何だ、乗馬の経験はないのか?全く…これだから庶民は」

俺は。

「きゃあっ!?」

スカートが捲れるのも気にせず、リルチェッタの小柄な体を肩に担ぎ上げた。