来栖恭太郎は満月に嗤う

だが彼女とて馬鹿ではない。

この申し出が、俺の挑発である事は感づいているようだった。

『敢えてチャンスをくれてやる。殺せるものならば殺してみろ』

この馬での散歩の同行の申し出は、つまりそういう意味なのだ。

下手をすれば復讐に失敗し、俺の怒りを買ってその場で返り討ちに遭う可能性もある。

「で…ですが…私は…メイドとしての仕事が…」

予想外の俺の言葉に狼狽し、返答を言いよどむリルチェッタ。

受けるべきか、断るべきか。

困惑の色が見え隠れする。

しかし、彼女の意思が固まるまで待ってやるほど俺は優しくもないし、それでは嗜虐心を満たせない。

要は、リルチェッタを精神的に責め嬲りたいのだ。

「メイドの仕事?」

俺は意地の悪い笑みを浮かべた。

「お前はそんなくだらない用件で主人の申し出を断り、この俺に恥をかかせるのか?」

「……っ」

こうなってしまっては、最早リルチェッタに選択権はない。

彼女は俺の事実上の命令を、受ける他なかった。