来栖恭太郎は満月に嗤う

「!!!?」

突然の声に、アリカは心底驚いた表情で振り向く。

当然だろう。

本来ならば、俺は今もゴーレムの拳の狭間に挟まれたままの筈なのだ。

「どうやって抜け出したの?いつ抜け出したの?」

「そんな事より…そら」

アリカの質問を無視して、俺はゴーレムの方を指差す。

見ればゴーレムの巨体は、頭部を残すのみになっていた。

訳も分からないまま、岩石の巨体がどんどんめり込んでいく。

いや、正確にはめり込んでいるのではない。

…闇があった。

夜の闇よりも更に濃い、言うなれば凝縮された闇の球体。

ゴーレムが、その闇の球体によって巨体を飲み込まれつつあったのだ。

やがて悪食な闇は、命なき岩石の巨人を嚥下する。

蛇が獲物を丸呑みするように、残された頭部さえも、夜より深い闇の中へと沈めていったのだ。