来栖恭太郎は満月に嗤う

岩石の拳に挟まれた僅かな隙間。

そこから聞こえる俺の声に、アリカの笑い声が止んだ。

「まだ生きていたの?流石は野蛮な吸血鬼ね。生命力だけは一端という奴かしら」

腕を組み、彼女は見下すような口調で言う。

そこに苛立たしさも、切迫したような雰囲気も感じられない。

俺が生きていたとはいえ、その命は最早風前の灯。

そう考えているのだろう。

「どうする?これまでの無礼を心から詫びて、私に絶対服従を誓うのならば、殺すのだけは勘弁してあげるけど。『アリカ姉様の靴の裏を舐めさせて下さい』って命乞いして御覧なさい?」

うっすらと顔を上気させて、そんな事を言うアリカ。

下卑た感情に性的興奮を覚えているのかもしれない。

つくづく性格破綻者だ。

だが。

「お断りしよう」

俺はゴーレムの拳の狭間から拒否の言葉を投げた。

「命乞いするほど追い詰められてはいないのでな」